お腹の手術を経験された方の中には、退院後しばらく経ってから「便秘と下痢を繰り返す」「お腹が張って苦しい」といった不調に悩まされる方がいらっしゃいます。その原因のひとつとして挙げられるのが「癒着」です。
「癒着が原因なら仕方がない」と主治医に言われ、どこに相談すればいいのか分からないまま過ごしている方も少なくありません。そんな中で「腸もみ」という選択肢を耳にし、「これは自分のケースにも合うのだろうか」と検索してこのページにたどり着いた方も多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、腸もみは癒着そのものを治す施術ではありません。ですが、体の巡りを整えるケアとして関われる範囲は確かに存在します。
この記事では、腸セラピーサロン凜花の坂本麻紀が、癒着による便秘・下痢と腸もみの関係について、安全性を第一に、できることとできないことを整理してお伝えします。
手術後の癒着による便秘・下痢はなぜ起こる?
お腹の手術のあと、腸やその周囲の組織が本来離れているはずの場所でくっついてしまう状態を「癒着」と呼びます。癒着自体は手術を受けた方の多くに程度の差こそあれ起こりうるもので、必ずしも異常事態というわけではありません。
問題は、癒着によって腸の一部が引っ張られたり動きが制限されたりすることで、本来なめらかに行われるはずの腸のぜん動運動にムラが出やすくなることです。動きが悪くなる部分では便が滞って便秘になり、その反動や腸内環境の乱れから下痢を起こすなど、便秘と下痢を交互に繰り返すケースも珍しくありません。
こうした症状について「癒着によるものなので仕方がない」と説明を受け、それ以上の対処法が見つからないまま日常生活を送っている方も多いようです。実際、癒着そのものを取り除くには再手術が必要になる場合もあり、症状が生活に大きく支障をきたしていない限り、経過観察という判断になることは決して珍しいことではありません。
だからこそ「治療とは別の形で、日々のつらさに少しでも寄り添えることはないか」と考える方が、腸もみのようなセルフケア以上・医療未満の選択肢に関心を持たれるのだと思います。

腸もみが関われる範囲と、関われない範囲
腸もみは癒着を治す施術ではない
まず明確にお伝えしておきたいのは、腸もみは癒着した組織を剥がしたり、癒着そのものを解消したりする施術ではないということです。癒着は医学的な処置が必要な状態であり、腸もみを含むいかなる民間の施術も、それに代わるものにはなり得ません。
「腸もみで癒着が取れる」「癒着が改善する」といった表現を見かけることがあるかもしれませんが、そうした断定的な言い方には注意が必要です。腸もみはあくまで、お腹まわりの筋肉や皮下組織にやさしく働きかけ、体全体の巡りを整えることを目的としたケアだとご理解いただくのが正確です。
巡りを整えることで期待できる変化
癒着があると、その周辺の血流やリンパの流れ、腸のぜん動を助ける自律神経のバランスなどが乱れやすくなる傾向があります。腸もみでは、癒着部分そのものではなく、その周囲の巡りにやさしくアプローチすることで、こわばった状態が少しやわらぐことを目指します。
その結果として、お腹の張りが軽く感じられたり、便通のリズムが多少整いやすくなったりすることを実感される方もいらっしゃいます。ただし、これは個人差が非常に大きい領域です。癒着の程度や場所、体質、生活習慣などによって感じ方はさまざまで、すべての方に同じような変化が起こるわけではないという点は、あらかじめご理解いただきたいと思います。
痛み・炎症・不安がある場合は施術できない理由
お腹に痛みがある、炎症を起こしている、あるいは強い不安を抱えたまま施術を受けたいというご相談をいただくこともあります。ですが、こうした状態での施術はお受けしていません。
痛みや炎症は、体が「今は触れないでほしい」と発しているサインであり、その状態で外部から刺激を加えることは、リスクを伴う可能性があります。また、強い不安を抱えたままでは、体も緊張状態になり、本来期待するような巡りへのアプローチが逆効果になりかねません。安全を優先するからこそ、こうした場合には施術をお断りする、あるいは医療機関への相談を先にお願いすることになります。

東洋医学で見る「癒着と巡りの乱れ」
気・血・水の巡りが乱れると腸がどう反応するか
東洋医学では、体の中を巡る「気・血・水」のバランスが健康の土台になると考えます。気はエネルギーや働きの巡り、血は栄養を運ぶ巡り、水は体液全体の巡りを指し、これらが滞りなく流れている状態が理想とされます。
手術によって腸の一部が引っ張られたり動きが制限されたりすると、その部分を中心に気の巡りが滞りやすくなり、いわゆる「気滞(きたい)」に近い状態が生まれやすいと考えられます。気の巡りが滞ると血や水の巡りにも影響が及び、お腹の張りや冷え、便通のリズムの乱れといった形で体に現れることがあります。
手術後に巡りが滞りやすい理由
手術という体への大きな負担は、東洋医学的に見ても気・血を大きく消耗する出来事です。傷の回復にエネルギーが使われる一方で、癒着によって局所的な巡りの通り道が狭くなることで、全体としての巡りのバランスが崩れやすい状態が続くことがあります。
この「消耗」と「滞り」が同時に起こりやすいことが、手術後しばらく経ってからも便通の不調が続きやすい一因ではないかと、東洋医学の視点からは捉えられます。
呼吸・お腹の張り・冷えなどの体感的サイン
巡りの乱れは、日々のちょっとした体感にも表れます。呼吸が浅くなりがちだったり、お腹が張って重だるく感じたり、お腹まわりだけ冷えを感じやすかったりするのは、その代表的なサインです。
こうしたサインは「気にしすぎ」で片づけられがちですが、東洋医学では体からの大切な情報として捉えます。腸もみでは、こうした体感的なサインにも耳を傾けながら、お腹まわりの巡りにやさしく働きかけていきます。

実際のケース:50代女性の例
ここで、実際にご相談いただいた事例をひとつご紹介します。プライバシーに配慮し、内容の一部は特定を避ける形で表現しています。
ご相談にいらしたのは50代の女性で、腹部の手術を受けたあと、便秘と下痢を交互に繰り返す状態が続いていました。主治医からは「癒着による影響も考えられるが、経過を見ましょう」と説明を受けており、ご本人としては「何か日常的にできることはないか」という思いで来店されました。
お話を丁寧に伺い、痛みや炎症がないことを確認したうえで、癒着そのものには触れず、その周囲のお腹まわりの巡りを整えることを目的とした施術を行いました。回を重ねる中で、ご本人からは「便通のリズムが以前よりよくなった気がする」「お腹の張りが軽く感じられる日が増えた」といったお声をいただいています。
もちろん、これはあくまでこの方お一人の体感であり、癒着そのものが解消したわけではありません。同じような施術を受けても、すべての方に同じ変化が起こるとは限らず、体質や癒着の状態によって感じ方はさまざまです。この事例は「こういう関わり方もある」という一例としてご参考にしていただければと思います。
腸もみを検討する前に必ず確認してほしいこと
主治医への相談が必要な理由
癒着による便秘・下痢でお悩みの方が腸もみを検討される場合、まず主治医にご相談いただくことを強くおすすめしています。ご自身の癒着の状態や既往歴は、担当されている医師が最も正確に把握しています。腸もみを受けても問題がないかどうかは、その情報をもとに判断されるべきことであり、私たちが医学的な可否を断定することはできません。
治療中の方の施術は基本的に受けていないこと
現在治療を継続されている方については、基本的に施術をお受けしていません。治療中は体の状態が変化しやすく、外部からの刺激が治療の経過に影響を与える可能性を否定できないためです。これは腸もみの効果を疑ってのことではなく、あくまで安全を最優先に考えた結果の方針です。
痛み・炎症・不安がある場合は施術できないこと
繰り返しになりますが、痛みや炎症がある状態、また強い不安を抱えたままでの施術はお受けできません。「少しでも不安があるうちは無理をしない」という考え方を大切にしています。
具体的な可否は対話しながら丁寧に判断していること
ここまでお伝えしたことはあくまで一般的な考え方であり、実際に施術をお受けできるかどうかは、お一人おひとりの状態によって異なります。カウンセリングの中で現在の体調や治療の状況、主治医からの説明の内容などを丁寧にお伺いしたうえで、施術の可否を判断しています。少しでも気になることがあれば、無理に予約を進めず、まずはご相談という形でお声がけください。

まとめ:希望と安全性の両立が大切
腸もみは「癒着を治す施術」ではなく、巡りを整えるケアであること
手術後の癒着による便秘・下痢は、日常生活の質に関わる、決して軽く扱ってよい悩みではありません。だからこそ「何かできることはないか」と探される気持ちはとても自然なことだと思います。ただ、腸もみは癒着そのものを治す施術ではなく、あくまでお腹まわりの巡りを整えることを目的としたケアであるという前提を、まず正しくご理解いただくことが大切です。
安全に検討するためのポイントの再確認
腸もみを検討される際は、①まず主治医に相談すること、②治療中でないこと、③痛み・炎症・強い不安がないことを確認したうえで、経験のある施術者と対話しながら丁寧に可否を判断していくことをおすすめします。過度な期待をせず、できることとできないことを正しく理解したうえで選択いただくことが、心身にとって最も安全な向き合い方だと考えています。
ご自身の状態について迷われることがあれば、まずは主治医にご相談いただいたうえで、疑問点があれば腸セラピーサロン凜花までお気軽にお問い合わせください。




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