春になると、植物が芽を出し、枝葉を伸ばしていきます。固い土を押し上げて芽吹き、太陽の方向へ伸びていく植物の姿には、内側から外へ向かう力を感じます。
東洋医学の五行では、このような樹木の性質を「木」と表します。五行において「木」に対応するのが、「肝」と「胆」です。
ここでいう「肝」は、現代医学における肝臓とまったく同じものではありません。肝臓と重なる部分を持ちながら、東洋医学ではより広い働きを持つ概念として捉えられています。
今回は、五行の「木」と肝・胆の関係から、東洋医学における「のびやかさ」という考え方についてご紹介します。
五行における「木」とは

五行とは、自然界にあるさまざまなものを、
- 木
- 火
- 土
- 金
- 水
という5つの性質に分け、その関係性を捉える東洋医学の考え方です。
「木」は、樹木が成長していく姿と重ねられています。
芽を出す。枝を伸ばす。葉を広げる。木は、一方向へまっすぐ伸びるだけではありません。周囲の環境に合わせながら、光を求めて枝を広げ、ときには曲がりながら成長していきます。五行における「木」にも、こうした成長や伸展、広がりといった性質があります。
また、「木」は春とも対応しています。冬の間、静かに蓄えられていたものが、春になると外へ向かって動き始める。
そんな自然界の変化も、「木」の持つ性質を表すもののひとつです。
「木」に対応するのは肝と胆
五行では、「木」に対応する臓腑として「肝」と「胆」があります。肝は「五臓」のひとつ、胆は「六腑」のひとつで、東洋医学ではこの二つは「表裏(ひょうり)」の関係にあると考えられています。
東洋医学における「肝」は、現代医学の肝臓と完全に同じものではありません。現代医学における肝臓の働きと重なる部分を持ちながら、東洋医学では、身体のなかのさまざまな働きとの関係をより広く捉えています。
その代表的な考え方のひとつが、「肝は疏泄(そせつ)を主る」というものです。
「肝は疏泄を主る」とは?
「疏泄(そせつ)」という言葉は、日常生活ではあまり聞き慣れないかもしれません。「疏」には、通す、滞りをなくすという意味があり、「泄」には、外へ出す、のびやかに広げるという意味があります。東洋医学では、肝には身体のなかの「気」の流れをスムーズに保つ働きがあると考えられています。
ここでいう「気」も、単純に何かひとつの物質を指すものではありません。東洋医学独自の概念であり、生命活動を支える働きや身体の動きなどを捉えるための考え方のひとつです。
「肝は疏泄を主る」という言葉には、身体のさまざまな働きが、一か所に滞ることなく、のびやかに巡っている状態を大切にするという東洋医学の考え方が表れています。
「木」と「のびやかさ」
木が伸びるためには、ある程度の空間が必要です。枝がどこにも伸びることができなければ、窮屈になります。
人も同じように、「のびやかさ」を感じられるときがあるのではないでしょうか。
ここでいうのびやかさは、何でも自由にするという意味ではありません。自分らしく動けること。進みたい方向へ進めること。ときには方向を変えることができること。そんな「余白」のある状態を、木の性質から考えることができます。
五行の「木」は、ただ成長することだけを意味するものではありません。まっすぐ伸びる木もあれば、風を受けながら曲がって育つ木もあります。どのように伸びるかは、それぞれ異なります。
「木」という性質は、人もまた、それぞれの形で成長し、変化していく存在であることを思い出させてくれるようです。

「木」と「怒」の関係
五行では、それぞれの要素に感情も対応しています。「木」に対応する感情は、「怒」です。
「怒」と聞くと、怒りっぽいことや感情的になることをイメージするかもしれません。
しかし、東洋医学における五行の感情は、「この感情を持つ人はこのタイプ」という単純な性格分類ではありません。また、怒りそのものを悪いものとして考えるわけでもありません。怒りは、自分にとって大切なものが傷つけられたときや、不当な扱いを受けたと感じたときなどにも生まれる自然な感情です。
「木」の持つ、外へ向かう力や動きという性質と合わせて考えると、怒りもまた、人が自分の意思を外へ表すエネルギーのひとつとして見ることができます。
もちろん、感情を無理に表現する必要も、抑え込まないほうがよいと単純に言えるものでもありません。
ただ、「怒」という感情も身体と切り離して存在するものではないと考えるところに、東洋医学ならではの見方があります。

「肝」と血の関係
東洋医学では、「肝は血を蔵す」と考えられています。ここでいう「血」も、現代医学における血液と完全に同じ概念ではありません。東洋医学では、血は身体を栄養する大切なものとして捉えられています。
「肝は血を蔵す」という考え方からも、肝が身体のさまざまな働きと関係づけられていることがわかります。また、東洋医学では肝と目、筋なども関連づけられています。
現代医学では別々の領域として扱われるものを、ひとつの臓腑との関係から眺める。こうしたつながりの見方も、東洋医学の特徴のひとつです。
腸だけを見ない、という東洋医学の視点
腸について考えるとき、私たちは食事や腸内環境、排便などに注目しがちです。それらはもちろん、腸を知るうえで大切な視点です。しかし東洋医学では、身体の一部だけを取り出して考えることはありません。
五行では、
- 肝・胆は「木」
- 心・小腸は「火」
- 脾・胃は「土」
- 肺・大腸は「金」
- 腎・膀胱は「水」
というように、それぞれの臓腑を自然界の性質とも関連づけながら捉えています。
さらに、それぞれの要素は独立しているのではなく、互いに関係し合っています。腸もまた、単独で存在しているわけではありません。小腸には「火」の心とのつながりがあり、大腸には「金」の肺とのつながりがあります。そして身体全体を見るなかでは、「木」の肝や胆も含め、すべての臓腑との関係のなかで捉えることができます。
腸だけを見るのではなく、身体全体を見る。そんな東洋医学の身体観をベースに腸セラピーサロン凜花では、腸もみを行っています。

まとめ|「木」は自分らしい方向へ伸びることを考えるヒント
五行における「木」は、春に芽吹き、枝葉を伸ばす樹木のように、成長や伸展、広がりといった性質と関わります。身体では、「肝」と「胆」が対応しています。
東洋医学における肝は、現代医学の肝臓と重なる部分を持ちながら、より広い概念として捉えられています。「肝は疏泄を主る」「肝は血を蔵す」といった考え方からも、肝が身体のさまざまな働きと関連づけられていることがわかります。また、「木」には「怒」という感情も対応しています。
こうしたさまざまなつながりを知ると、東洋医学が身体を部分の集合としてではなく、自然界との関係も含めた大きなつながりとして見ていることがわかります。
芽を出し、伸び、広がっていく木。その姿から、自分自身は今、どのような方向へ向かっているのかを眺めてみる。五行の「木」は、そんなふうに自分自身を見つめるひとつの視点を与えてくれるかもしれません。
腸セラピーサロン凜花では、腸だけをひとつの器官として切り離して考えるのではなく、東洋医学の考え方も取り入れながら、身体を全体として感じる時間を大切にしています。
※この記事で紹介している「肝」「胆」「気」「血」などは、東洋医学における概念であり、現代医学における臓器の機能や病気の診断とは異なります。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。




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